善玉菌が腸管内でどのように作用しているかを示す免疫システムのモデル

原著は Ji G.E.: Probiotics in primary prevention of atopic dermatitis : Forum of nutrition 2009; vol.61, pp117-128 で、今回はこの論文中に掲載されている図版を元に、ビフィズス菌、アシドフィルス菌等をヒトに使用してアトピー性皮膚炎を予防、あるいは治療する根拠となるProbioticsの免疫調節メカニズムについて概説する。

ヒトを含む哺乳類の腸管内には、いわゆる善玉菌として宿主と共存している腸内細菌叢が存在する。これらの細菌類は宿主に与える利益を期待して、Probioticsとして使用されているが、その免疫調節作用メカニズムが明らかになってきた。
図に示されたのは、Probioticsが腸管上皮のパイエル板で免疫担当細胞に影響して、アレルギーの発病を阻止・予防する、端的に言えば食物等の外来異物を攻撃標的と認識しないメカニズムに関与するモデルである。

図の中に書き込んだように、Probioticsは、①腸管上皮細胞に接触して細胞内シグナル伝達に影響を与えて、TGF-β,IL-8,PGE2の分泌を促進する。②さらに腸管上皮の免疫調節機能中心であるパイエル板のM細胞にその生産物質と共に取り込まれ、免疫担当細胞に提示される。③樹上細胞が提示された情報を受け取り、未分化・未成熟のT細胞をレギュラT細胞(Th3,Tr1)へと分化・成熟させる。④同じくマクロファージがM細胞から情報を受け取り、IFN-γ,IL-4,IL-5を調節してTh細胞の機能分化に影響をあたえる。⑤IL-10,TGF-β,IFN-γのシグナル誘導により、T細胞の分化・成熟が正常に発現してアレルギー炎症の発病を抑制すると共に、食物への経口的脱感作を獲得する。

以上が図で示された、善玉菌が腸管内でどのように作用しているかを示す免疫システムのモデルである。