私の心を捉えたのは新生児医療

病院勤務時代にアレルギーと共に私の心を捉えたのは新生児医療でした。当時は肺サーファクタント療法が普及し始めた時期で1000g未満の未熟児の呼吸管理が飛躍的に進歩していました。私達も精密な全身管理で如何に極小未熟児を健常児に育てるかの技術を競い合っていました。当時助けた小さな命が20年以上経って立派な大人になり社会で活躍している姿を見るのは小児科医として嬉しい限りです。
未熟児は免疫抵抗力が弱いので徹底した衛生管理が必要です。病院では未熟児に限らず無菌=清潔で健やかな生育と考える面が強くあります。アレルギーという病気は百年前には地球上に極僅かしか有りませんでした。私が当時興味を持っていたテーマはどうしてアレルギーが百年間で急に増えたのか?という病気の増減を研究する疫学です。その中で病院で出産される子どもの多い地域でアレルギーが早くから増加した点に注目しました。病院出産の何処にアレルギー増加の秘密が隠れているのか?私は極度な清潔管理に有るのではないかと仮説を立てました。
しかし新生児を不衛生に扱うなどと医学の常識に反する考え方は病院内では絶対に許されません。私は自分の夢と研究を続けるために独立開業する道を選びました。